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Q:初心者向けのソフトやペンタブレットは?

管理人のデジタルマンガ制作環境
ご注意
2016年の記事です!現在はどんどん安価で高機能な機種も発売されているため、ペンタブ等を購入する際はご注意ください。

マンガ教室の受講者さんから頂いた質問への回答です!

ゆくゆくはデジタルで描きたいので、初心者向けのソフトやペンタブがあればアドバイスをいただきたいです。

生徒さん(30代)

漫画歴は:高校時代、二次創作の同人誌を友人が作っていたので、2,3回程度、穴埋めに5,6ページ描いたことがあります。ほとんど4コマです。


初心者向けペンタブについての回答

ペンタブの説明をする前に、まず「初心者向け」という言葉の解釈に触れさせてください。

「初心者が使いやすい」という意味なら、技術が伴っていない腕を補うために、より描きやすい環境を整えることを優先しましょう。絵を描き慣れていない人がフルデジタルで作画をする場合は、画面に直接描ける液晶タブレットがオススメです。

「いつこの趣味を投げ出すかも分からない初心者が投資するのに適切なもの」という意味であれば、機能は劣りますが、液晶なしの板タブレットで、最下位付近のモデルから始めるといいと思います。

「大金を払うと後戻りできなくなる」という性格なら、27型ぐらいの30万円ぐらいの液晶タブレットでいいんじゃないでしょうか(笑)

描きやすさ重視は液晶ペンタブ

ここで言う「描きやすさ」はフルデジタルで線画から描く場合を想定しているので、スキャンした下絵(線画)に着色して軽く仕上げ作業をする程度だったら、低価格な板タブレットでも充分です。

ただ、もし「線画から何からデジタルで完結させたい」「少なくとも数年続ける趣味にしたい」という意志…と、3万円以上の予算があるようなら、液晶タブレットをオススメします。画面に直接描けるので直感的に描けます。3〜8万円ほどで入手可能。

昔は同じメーカーでもこれより小さくてゴツくて機能の低いものが10万円以上して、それを無理して買ったんですが、今は実勢価格で7万円台(クリップスタジオ付きで8万5千円…)だってんだからもう私は目眩がしますよ。今の人はいいなぁ…。

こちらは私が長年愛用しているワコム 製で、友人が使っているモデルを何度かいじらせてもらったことがあります。上位モデルで大きな画面のものもありますが、仕事で大掛かりなものを描くとか、画面を広く使いたいとかがなければこれくらいのサイズで大丈夫です。
また、USB接続なので主要機材の割には取り外し持ち運びも楽です。

memo
自室や居間や職場などなど…色んな場所で描きたいなら10インチ〜13インチくらいがちょうどいいので、入力デバイスは必ずしも「大は小を兼ねる」ではありません。大は機動力が低くて、性格によっては描かなくなる。

懐古していたら3万円以下の液晶タブレットを見つけて心が死んでしまいそうです。ぐえ〜。使用経験のないメーカーさんの商品なので、書いてあるスペック以上のことは分かりませんが、3万円以下(最終更新した2018年6月1日時点で¥29,999)なら、中級の板タブレットと同じような価格帯なので、ちょっと冒険してみてもいいかもしれないですね。

本体サイズが39×28.4cmとのことなので、大体B4サイズ(257×364mm、ノートや週刊少年ジャンプを広げたときの寸法)ですが実際に描ける範囲は商品画像で絵があるエリアだけなので、画面は結構カツカツかもしれません。資料やソフトの操作パネルは、接続しているパソコン本体のモニターのほうに移して、液タブ側は作画だけに使ったほうがいいと思います。

こちらも私は使ったことがないメーカーの製品なので使用感はなんとも言えませんが、21インチクラス10万円以下のとんでもない液タブもあります。恵まれてるなぁ、今から始める人はよぉ!!なんだ20インチ以上で6万3千円って!!(最終更新した2018年6月1日時点の価格です。)

これは大画面を望む人には素晴らしい価格帯だと思いますし、重さも6kg弱とのことなので、家の中でちょっと移動する程度は不自由なさそうですね。ただ、56cmあるので(ホームセンターとかに売ってる肩幅よりちょとある感じのちゃぶ台が大体60cm)職場や出張先に持っていくっていうのはオオゴトだと思います。置く場所がないなら選択肢から外れてしまうかもしれないですね。

ただ、私がこれらを「安い」と感じるのは、もっと値段の張る業務用の機材を更に値段も高く選択肢もなかった時代から買い続けてきたからであって、昔と比べて安くなったとは言え、3万円だの7万円だのを続くか分からない趣味に投じるのは勇気の要ることです。
迷ったらとりあえずは無理せず板タブレットでもいいと思います。「板タブレットで描いたマンガで稼いだお金で液晶タブレットを買うぞ〜!」とかもモチベーションになりますし。

最後に液晶タブレットでの作例です。フリーハンドでサササッと線を引きやすいのは直接描ける液タブならではだなと思います。


「どっか行こっか」 |CNKI Production – 中村珍公式サイト(作者:penk管理人)
作画ソフト:CLIP STUDIO PAINT EX |ペンタブ:Cintiq |PC:iMac

中村珍「どっか行こっか」より

飽きる可能性も視野に入れた価格重視なら板タブで

板のペンタブレットは、手元の板の上でペンを動かして、目はパソコンの画面を見て、作業します。紙に直接描く感覚とは異なり「マウスがペンに変わっただけ」です。マウスも手元は見ずに画面を見ますよね。

こちらは板タブレットでの作例です。フリーハンドの線を引きやすいのは液タブの勝利ですが、色を塗るタイプの作業なら私は板タブで充分でした。線の多い漫画なら断然液タブです。(線も描けないわけではないですが、描きやすくはなかったです。)


「羣青」試し読み(小学館) |CNKI Production – 中村珍公式サイト(作者:penk管理人)
作画ソフト:Corel Painter|ペンタブ:Intuos|PC:Windows vista

中村珍「羣青」(小学館)より

「紙に描くのと変わらない」的なシームレス(?)感覚は得られませんが、最近の板タブは安価なモデルでも描き心地がいいので、想像で怖がるほどのものでもないと思います。私も2012年頃に1万円以下だった板タブを使ってみたことがあるのですが、描き味も滑らかで驚きましたよ。近年だったらもっと性能がいいんじゃないでしょうか。

memo
選ぶときに注意したいのはモニターとペンタブのサイズ比。画面のサイズと大幅にかけ離れていなくて、自分の持ち運び頻度に合ったサイズのものを選ぶと良いです。

板の端から端までペンを動かす動作=モニターの端から端までカーソルが動く動作。
あまりにも大きなモニターにあまりにも小さなペンタブでお絵描きすると、小さなストロークで長い線が引けてしまいます。良く言えば「疲れなくていい」ですが、手加減が難しいから線の1本1本を引くのに必要以上の神経を使ったり、作画画面を何度も拡大縮小したり、地味な面倒が多くなります。
逆に大きな板タブを使ってとってもコンパクトなノートパソコンでお絵描きすると、ちょっとした線を引くのに手を大きく振ることになって無駄に疲れます。

お絵描き業界で頭角を現し始めたiPad

もし、あなたが「iPadが欲しいな〜」と思っていて、操作に慣れるまでの期間は「サラッと描いたものをSNSにアップする」以外のことをしないのであれば(そして普段PCを開くクセがないのであればなおさら、)iPad Pro+Appleペンシルの組み合わせのほうが機動力は高いはずです。

「iPadだけで数百ページに渡る超大作を物凄くリアルな作画で画面にたくさんの資料を並べて1年以内に仕上げよう」って話になると難しいですが、「月に1〜2本の3ページエッセイをSNSにアップしたい」とかだったらiPadと後述のソフトのiPad版で完結…どころか、オーバースペックです。


初心者向け漫画制作ソフトについての回答

向こう数年〜十数年先までは分かりませんが、現状はセルシスのCLIP STUDIO PAINT EX が最強です。

ソフトの概要とコスト

プロ漫画家も仕事で使うソフトですが「他に初心者向けの簡単なソフトが存在する」ということはありません。アレコレ覚えることがあるのですが、だいたいどの作画ソフトも覚えることは色々ありますし、どうせ覚えるなら「最も汎用性が高い」「マンガ制作に必要なすべてを意識して設計されている」という意味で、これを一番オススメします。長大なストーリー漫画も、4コマ漫画ももちろん描けます。
これまで慣れ親しんだソフトがあるなら別ですが、今から始めるならPhotoShopもPainterも導入する必要はありません。イラストも漫画もクリスタ1本で充分です。

パソコン版の場合はCLIP STUDIO PAINT EX 公式サイトから契約すれば月額500円で利用できます。
量販店などで一括(定価23,000円)でパッケージを買うこともできますが、絶対使うわけじゃないなら月額でいいと思います。なぜなら50ヶ月使うと、月額契約でも最終的にはシリアルナンバーをもらえるので。

memo
クリスタの月額利用料は永久に払い続けるものではない!500円を50ヶ月または1,000円を24ヶ月支払えば「それ以降は一生無料で使えますよ〜」とシリアルナンバーがもらえる無審査の分割払い。(シリアルナンバーの獲得条件は最終更新した2018年6月1日時点のものです。)

トータルでは一括払いと月あたり数十円しか違わないし機能も同じなので、ドカッと出せないけど長く使いたい場合は月額のほうがいいと思います。解約もいつでもできます。ただ、途中で解約すると50ヶ月の積み重ねがリセットされた気がするので、最終的にシリアルコードを手に入れたい場合は、今の規約がどうなっているかよく調べてから慎重に選択してくださいね。ちょくちょく支払い忘れる人はパッケージで買っちゃったほうが最終的に安上がりかも。

描く、だけじゃなく編集〜出版まで

個人的な電子出版を行う際のデータづくりにも活躍します。
モリサワを始め各社のフォントをインストールすると、書店に並んでいるコミックスで見掛けるような字体でセリフやタイトルを打ち込むことができます。(文字を打ち込む作業もクリップスタジオの中で全部できます。)

漫画だけでなく1枚イラストも制作できるので、オリジナルのLINEスタンプを作って販売したい場合などにも活用できますし、スタンプへの文字入れもクリスタの中で完結します。

EXに手が出せない場合

1ランク下のCLIP STUDIO PAINT PRO というモデルもあります。こちらは5,000円くらいなので初めてでも思い切りやすいと思います。

機能に若干の違いがあるので、そこはちゃんと確認してくださいね。

PROにできなくてEXにできること

  • 複数ページの原稿を作品単位で管理したいならEXじゃないとムリ。逆にSNSに1〜2ページ漫画を載せるくらいならPROでいいかも。
  • 複数ページの作品を一括で印刷したり一括で指定の形式で書き出しするならEX。少ないページ数を画像としてSNSに上げるだけなら特に使わない機能だと思う。
  • 写真・画像・3Dデータをマンガ風の絵に自動変換できる。でも自動変換された絵に画風がマッチしている幸運な人か自動変換された絵を自力で自分の画風になじませる技術がないと使い道ないのでは?写真がカワイイ絵に化けたりとかはない。
  • EXだとフィルターやファイルのプラグインを組込みんだり機能を追加できるけど、初心者的な使い方ならこの機能の有無は気にしなくていいかも。
  • マンガのセリフを検索して置き換えたりまとめて入力できる。便利だけど大きなページ数を一括管理するレベルにならないと多分使わない。
  • 複数人でページごとに分担する作業をする場合の管理がしやすい!…が、同じ作品を同じタイミングでいじるアシスタントさんが居る場合とか、グループで描く場合ですね。
  • 印刷所のフォーマットに合わせた入稿データを作成して3Dプレビューで確認できるけど印刷しないならあんまり関係ない。
  • EPUBやkindle形式に書き出しできるけど、JPGで書き出したのをkindle側で用意した無料のソフトで並べて電子製本するっていう道もあるから、電子書籍はkindleでしか出版しないならここはどっちでもいいかも。noteは画像を1つずつアップする形だし。
  • 「フレーム数制限がないからプロのアニメスタジオでも利用できる」とのことだけどこれはマンガ初心者描きの本分ではないはず…。

参考:CLIP STUDIO PAINT PROユーザー様向け CLIP STUDIO PAINT EX乗り換え / アップグレード優待のご案内 | CLIP STUDIO

初心者さんの場合は、キモになるのが1番目の「複数ページの原稿を作品単位で管理したいか」じゃないでしょうか。アナログで言うと、作品を1冊にまとまったノートで管理するか、1枚ずつのルーズリーフで管理するか。みたいなことだと思います。
私は最初からEXだったのでPROの使い心地には明るくないため、PROを推すことはできませんが、「買ってすぐ、ちょっと長めのネーム制作にチャレンジしてみたい」ということなら複数ページを管理できるEXが便利でしょうし、「最初は2〜3ページで終わるものしか描かないから長いのはいつか慣れたら」ということなら、一旦はPROにして、ゆくゆくEXにアップグレードでも問題ないと思います。EXに乗り換える際は優待もあるようなので。

グレードはともかく、ソフト自体はクリップスタジオで正解だと思います。将来的にクリスタのファイルと互換性のある対抗馬が出てくる可能性はありますが、当面はクリスタ一強でしょうし、ユーザーが多いソフトは情報も充実していますから、他の人の描き方を見る機会も増えて面白いと思いますよ。

注意
一括で買う場合はAmazon等で問題ないですが、月額500円で利用する場合は、CLIP STUDIO PAINT EX 公式サイトから契約する必要があります。

iPad版もある

iPadでは月払いだと480円〜980円。年払いだと月あたり240円〜650円だそうです。(2018年5月31日追記時点。)

マネージャーとアシスタントさんが使っているのをたまに借りる程度なので正確なレビューはできませんが、iPad ProとAppleペンシルなしでは何もできない(無印のiPadじゃダメ)ので注意してください。
1枚絵(イラスト)を描く場合は結構込み入ったのも描けますし、厚塗りでも大丈夫でしたよ。(他のアプリケーション立ち上げまくったり容量いっぱいだったりすると分かりませんが…。)
先述の通り数百ページに渡る超大作を編集したり…みたいな作業はパソコンのほうが向いているので、最終的にストーリー漫画を描いてサクサク編集してKDPなどでの出版を目指すようであれば敢えて買い揃える必要はないですが、月に数回ちょっとしたエッセイをSNSにアップするような、コンパクトな創作活動にはピッタリです。

どんな絵柄でも使える

ソフトの中にいろんな種類の画材がもともと入っているので、様々な作風に対応できます。
プロ御用達ソフトだからといって、込み入った作画しかできない、ということはありませんし、フォトショップなどと比べて月額安めだからといって、ユルい絵しか描けない、ということも当然ありません。ソフトの中に机と画材屋さんが全部入っていると思うとイメージしやすいと思います。

以下の作例はすべてクリスタペイントEXで制作された同一人物による画稿です。


試し読み|レズと七人の彼女たち |おんなぐせドットコム – onnaguse.com(作者:penk管理人)
作画ソフト:CLIP STUDIO PAINT EX |ペンタブ:Cintiq |PC:iMac

「まずい。煙草って。」(レズと七人の彼女たち)

[似顔絵屋さん] pen and ink portrait shop 似顔絵作成サービスサンプル(作者:penk管理人)
作画ソフト:CLIP STUDIO PAINT EX |ペンタブ:Cintiq |PC:iMac

犬の似顔絵サンプル

夕焼けと戯れ|羣青番外同人集「紺橙」|おんなぐせドットコム – onnaguse.com(作者:penk管理人)
作画ソフト:CLIP STUDIO PAINT EX |ペンタブ:Cintiq |PC:iMac

高校時代のふたり|「羣青」番外マンガ

非常に汎用性の高いソフトなので、まだペンタブ等を持っていなくても、機能だけでも無料体験版で試してみると良いと思いますよ。